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「そっくりすぎる」と「いかにもAI」のあいだ

Case 3-A。造形とポーズは基準画像と同一のまま、色彩だけがくすんだパステル調に置き換わった少女のイラスト。全体が低彩度で、80〜90年代のレトロアニメのような色味になっている

「そっくりすぎる」と「いかにもAI」のあいだ

個人開発しているアプリのキャラクターを、画像生成AIに作らせようとした。そこで詰まったところから始まった調べものの、中間報告です。


きっかけ:両極端にしか振れなかった

やりたかったのは、ストリート系の雰囲気を持ったキャラクターを1体作ることだった。イメージに近い既存作品があったので、最初はその作品名を出して指定した。

出てきたのは、参照元とほぼ同じ造形のキャラクターだった。品質は高い。ただ、そのままでは当然使えない。

では作品名を外して、雰囲気だけを言葉で伝えたらどうか。「かっこいい女の子」「ストリート風」「ネオンカラー」——出てきたのは、どこかで見たことのある、特徴のないイラストだった。破綻はしていない。ただ、なぜか全部同じ顔に見える。いわゆる「いかにもAI」の絵だ。

同じモデルに、同じくらいの熱量で頼んでいるのに、出力は両極端にしか振れない。この差はどこから来ているのかが気になった。

自分なりの見立てはこうだった。作品名を指定したときに品質が安定するのは、AIがその作品を知っているからというより、画風・線画・塗り・色彩といったパラメータが、作品名という1語でまとめて固定されるからではないか。逆に指示が曖昧だと、AIは学習データの最頻値——いちばんよくあるパターン——に収束する。それが「いかにもAI」の正体ではないか。

だとすれば、作品名が一括で指定していた中身を、自分の手で分解して指定し直せば、作品名を使わずに同じ効果が得られるはずだ。

そう考えて、調べ始めた。

使ったモデルは Nano Banana 2(正式名称 Gemini 3.1 Flash Image、APIモデルID gemini-3.1-flash-image)である。


段階1:作品名を、一般名詞と美術用語に置き換える

最初にやったのは、参照元の造形を英語の一般名詞と美術用語だけで書き下すことだった。作品名は一切使わない。

これは思っていたよりうまくいった。造形はかなり再現できた。ただし、決定的なものが欠けていた。

参照元の魅力の中核は、実は造形ではなく塗りにあった。半透明のゼリーのように内部を光が透ける質感、濡れたエナメルのような帯状の光沢、影に回り込む高彩度の反射光。これらが失われて、平坦な塗り分けになっていた。

原因ははっきりしている。私が画風の指定として bold-line vector(太線ベクター)と clean cel-shading(クリーンなセル塗り)を書いたからだ。造形は一般名詞に翻訳できたが、質感は翻訳の対象にすらしていなかった。

「何が描かれているか」は移せる。「どう光っているか」は、別に指定しないと付いてこない。これが最初の発見だった。

段階2:作品固有の要素を置き換える

造形が参照元に近すぎる問題は残っていたので、固有の特徴を人間の造形に置き換えた。特徴的な髪を普通の髪に、目のまわりの模様をアイラインに、といった具合である。ストリート系という属性だけを残した。

これで、参照元から独立した1体ができた。以降の実験は、すべてこのプロンプトを土台にしている。


中間報告:どの語が、どこに効いたか

土台ができたので、そこから1か所ずつ書き換えて、出力がどう変わるかを見ていった。線画・塗り・色彩・媒体構図の4カテゴリ、9ケースである。

以下、印象に残ったものを挙げる。

線画の指定が、頭身まで動かした

bold-line vector, crisp outlines(太線ベクター)を delicate pencil lineart(繊細な鉛筆線)に置き換えた。線が細くなるだけだと思っていた。

実際には、頭身が6〜7頭身に伸びた。ライトノベルの挿絵のような、細身で繊細な絵柄に変わっていた。線の描き方を指定したつもりが、骨格まで一緒に動いていた。

線画の語は「線の見た目」ではなく、その線が使われるジャンルごと呼び出しているのかもしれない。

細身で繊細な鉛筆線調のイラスト。ティールからシアンへのグラデーションの長い髪、ゴーグル、ネオンのペイントが飛んだ黒のボンバージャケットを着た少女が、6〜7頭身の細身のプロポーションで白背景に立っている
Case 1-A(鉛筆調)の出力。線の描き方を指定しただけで、頭身が6〜7頭身に伸びた。

「水彩」が、紙まで持ってきた

clean cel-shadingsoft watercolor wash(やわらかな水彩)に置き換えた。プロンプトには「白背景で単独に」と書いてある。

出てきた画像の背景には、水彩紙のテクスチャが出ていた。絵の具のにじみまで再現されている。

技法名を指定すると、着彩の方法だけでなく、その技法が普通どんな支持体(紙やキャンバス)に描かれるかまで一緒に付いてくるらしい。

やわらかな水彩調で描かれた同じ少女のイラスト。にじみのある淡い着彩で、背景全体に水彩紙の目のテクスチャが出ている
Case 2-A(水彩調)の出力。「白背景で単独に」と指定しているのに、背景に紙の質感が出た。

色を変えただけで、年代が変わった

造形・ポーズ・線画・塗りの指定は1語も変えず、色彩の語だけを入れ替えた。高彩度のネオン系から、くすんだパステル系へ。

出てきたのは、80〜90年代のアニメやシティポップのような画だった。描かれているものは同じなのに、作品の時代設定だけが動いた。

色彩は他の要素と独立して操作できる可能性がある。これは実用上いちばん使えそうな観察だった。

基準画像。高彩度のネオンパレットで塗られた少女のイラスト。鮮やかなシアンの髪と、蛍光ピンク・イエロー・グリーンのペイントが飛んだ黒のジャケット
Case 3-A。造形とポーズは基準画像と同一のまま、色彩だけがくすんだパステル調に置き換わった少女のイラスト。全体が低彩度で、80〜90年代のレトロアニメのような色味になっている
上が基準画像(高彩度ネオン)、下が Case 3-A(くすみパステル)。造形の指定は1語も変えていない。入れ替えたのは色彩の語だけ。

「3人」を「1人」にするのに、3回かかった

途中から出力が3体並びのステッカーシートになっていたので、1体に戻そうとした。冒頭に solo(単体)を足せば済むと思っていた。

済まなかった。文中に trio(3体)や poses vary(ポーズが異なる)といった複数形を連想させる語が残っていて、そちらが勝った。画像を参照させて「中央の1人だけ」と指示する方法も試したが、元のレイアウトに引っ張られたうえ、頼んでもいない装飾が増えた。

最終的に、複数形を連想させる語を全部消したうえで、単体指定を文の先頭に置くことで通った。


ただし、これは「わかった」ではない

ここまでを資料にまとめたあと、確かめる手順を書こうとして、手が止まった。 上に書いたことは、確認された事実としては1つも成立していない。理由を並べる。

1. 各ケースの生成回数が1〜2回しかない。 5回試して5回とも同じ挙動が出たとしても、その挙動が起きる確率の95%信頼区間の下限は47.8%にすぎない。10回中10回でようやく69.2%である。1〜2回は、当たりをつける以前の段階だ。

2. 「変えなかったほう」を撮っていない。 水彩の紙テクスチャの件は、水彩と書かなかった場合に背景が白のままであることを一度も確認していない。何もしなくても出るのかもしれない。それでは水彩のせいだとは言えない。

3. 「レトロに見える」を判定したのは私である。 どちらがどちらの条件かを知ったうえで見ている。これは判定と呼べない。

4. 「3回かかった」の中身が分解できていない。 私は「複数形を消す」と「単体指定を先頭に置く」の2つを同時にやった。どちらが効いたのか、両方必要だったのかを確かめていない。

5. モデルの仕様を読んだら、検証計画の前提が消えた。 「プロンプトは固定してシードだけ変えて回数を数える」つもりでいたが、このモデルにはシードに相当するパラメータがない。加えて、思考モード・画像サイズ・検索連携といった、固定しないと出力が変わる設定が想定より多かった。とくに検索連携は、オンだとその日のWeb上の画像が生成に混ざる。

6. 「3回かかった」件は、公式に書いてあった。 ドキュメントの制限事項に、モデルは明示的に指定された画像の出力枚数を必ずしも守らないという趣旨の記載がある。私がプロンプトの書き方の問題として3回試行錯誤していたものは、既知の制約だった。調べる前に試していた順番が逆だった。

以上を踏まえると、上の「中間報告」は観察の記録であって、検証の結果ではない。読むときは、そのつもりで読んでいただきたい。


これから突き詰めたい3つの方向

A. 確からしさを上げる

対照条件——操作しなかった側——を各カテゴリに置いたうえで、回数を増やす。13条件×5回、65枚の設計にした。判定基準は生成前に決め、主観的な判定はファイル名を伏せてから行う。

「1回そう見えた」を「何回中何回そうなった」に置き換える作業である。地味だが、これをやらずに次へ広げても、感触が積み上がらない。

B. まだ触っていない領域

あとから調べたところ、プロンプトに足す語の分類は先行研究ですでに整理されていた(Oppenlaender, 2024)。主題語・様式修飾子・画像プロンプト・品質語・反復語・マジックワードの6類型である。

今回私が動かしたのは、このうち「様式修飾子」の一部にすぎない。 品質語・反復語・マジックワードは手つかずである。とくに、効果があるとされている「おまじない」的な語が本当に効いているのかは、自分の手で確かめてみたい。

C. 最初の問いに戻る──質感

そして、いちばん気になっているのがこれである。

段階1で失われたもの——半透明の透け、濡れたような光沢、影に回り込む反射光——は、造形の言語化では取り戻せなかった。glossy translucent / subsurface glow / wet specular highlight のような質感を指す語を、独立した項目として指定してみる必要がありそうだ。

これは冒頭の問いに直結している。「そっくりすぎる」と「いかにもAI」のあいだにあるものは、造形ではなく、質感なのではないか。作品名を出したときに一括で固定されていたもののうち、最後まで移せなかったのがそこだった、というのが今の見立てである。

先行研究の分類では、質感は様式修飾子に含まれているように見える。独立した項目として扱えるものなのかどうかは、まだ調べきれていない。もし切り出せそうなら、自分の整理に5つ目のカテゴリとして足すことになる。


現時点でわかっていること

作品名という1語が固定していた中身のうち、造形は分解して言語化できた。作品名を使わずに、意図した造形をかなりの精度で再現できるところまでは来た。

一方で、質感は分解できていない。そして、私が「いかにもAI」と呼んで避けたかったものの正体も、たぶんそこにある。

まずはAから始める。同じことを何度か試して確かめないまま、BやCへ広げても意味がないので。


元の資料については別途公開予定です。

個人的な試行錯誤の記録です。学術的な検証ではなく、各ケースの生成回数も1〜2回にとどまります。上記の観察はいずれも仮説の段階であり、検証済みの事実ではありません。

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